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『この世の外へ クラブ進駐軍』
〜池島昌三萌え鑑賞記〜
(鑑賞2004年2月8日)


(これは『この世の外へ クラブ進駐軍』の鑑賞記ですが、主にオダギリジョーにのみ突っ込んでますのでご容赦くださいませ)

 まず、ざっとした感想。
 「音楽はラヴ&ピースだ。でもって、泣けた!」「子供にも若者にも観て欲しい」
 前置き長いかも知れませんが。
 私は阪本順治監督の作品を阪本監督のだ、と意識して観たことがないのでまったく申し訳ないと思いつつ、行きました。その前に『ぼくんち』とか『顔』とか見ておきたかったんですが、ヨユーがなくって。
 でも正直言って、阪本監督すごい人だなぁ、と鑑賞後はじんわり思ってます。戦争を知らない世代が脚本、監督をして、またさらにその下の世代の俳優(私とほぼ同年代の)が演じる、戦争を知っている世代というのはどんなものなんだろう?とヒソカに疑問はあったんですけども。
 この映画の中のメッセージが、この地球上のどこかで今も展開されている、ずっと展開されている戦争の歴史に、それに直接関わる人々に何を齎すのだろうか。映画制作のきっかけは「9.11」だったといいます。現実に、この映画を撮影するにあたってのエキストラのアメリカ人の方たちは米軍キャンプに勤めていて、「明日はイラクに発つんだ」という方も少なくなかったようです。彼等は今、西の空の下で何を抱いているんでしょうか。この作品のシナリオはペンタゴンにまで届いているんだそうです。
 まず、私自身が何を思って生きていくべきなんだろうか、という事を思うと何度も何度も映画のランダムなワンシーンが頭を巡って行きます。
 そんな映画なのです。
 
 と、いう風にしんみりはじまってしまいましたが。
 フタを開けてみれば「昌ちゃん萌えvv」
 ていうか、「オダギリおもろカワイ過ぎ」
 「ラッキーストライカーズ」というジャズバンドのメンバーの青春ドラマであり、戦後の日本や友情を描いたストーリーです。
 メンバーは、テナーサックス&ヴォーカル:広岡健太郎(萩原聖人)、ドラムス:池島昌三(オダギリジョー)、トランペット:浅川広行(MITCH)、ベース:平山一城(松岡俊介)、ピアノ大野明(村上淳)。
 昭和22年の東京。米軍基地のクラブでバンドマンとして雇って貰うために集まった五人の男たち。軍楽隊出身の広岡とその先輩のジョーさんこと平山、ブラスバンドあがりの大野らが乗り込んだ基地行きのトラックに、一緒に乗った池島昌三。
 道端の靴磨きの子供に靴を磨かせながら「これで秋刀魚がひっくりかえせるかぁ?」と言う昌三の登場シーン。既に三枚目。
水色のスタンドカラーのスーツが似合う。7:3の髪型もけっこうイケるやん。
 「この時代にモミアゲはない、剃れ。前髪も切れ。痩せろ」と監督に言われてたオダギリ、見事に剃って好青年風。実は『この世〜』の撮影時、フジTVの『顔』の撮影時とカブってたそうです。それで、『顔』の西島刑事の前髪が途中から黒くなってたとは……いや、「何だか黒く戻してる?」とは思ってドラマ見てたものの、こういう秘話があったとはねぇ。モミアゲもだから途中からツケ毛なんですって。痩せろ、はメンバー全員だそうですが、西島役のためじゃなかったのね。いやはや大変だ。
 さて。
 実は、昌三はドラムには触ったこともないのに、一稼ぎできるということでドラマーに志願しちゃったのです(笑)。トラックの中でそれがバレて「お前ベース持って突っ立っとけ」と健太郎に言われてしまう昌三。
 「ハイ♪」と明るく返事してしまうカワイイ昌三。ああ、萌えvv
 基地についてからの昌三。なんだか落ち着かないねぇ〜と思ってみてたら、ジョーさんに「べ、便所はどこですか?」と。
 しかも、股間を押さえながら歩く昌三(笑)
 「やっぱり三枚目!それも里見健一(『サトラレ』)キャラ!?」
 『サトラレ』の第一話でもEVの中でお腹が痛くなってきた、というシーンがあったんですが、ここでもそうなのかよ!催すものは違うケドも。
 そういえば、新選組でも斎藤一が鴨ちん一行と大阪へ遊興に行く舟の中で船酔いの所為か腹が痛くなるつー場面があるのですが、大河でそれをやるのかしらん?里見健一キャラになっちゃうのかな?と心配したり(笑)。
 余談はさておき。
 初めてみるアイスクリームに指を突っ込む、コーク飲んで「これクスリですか?」とお子ちゃまぶりをガンガン発揮する昌三。
 演奏時もEMクラブのマネージャー・ジム(ピーター・ムラン)の「SMAIL!」というジェスチャーにチンプンカンプンで一人たどたどしく反応する昌三。う〜んカワイイvv
 演奏終わって、皆引き揚げてから「CHERRY」という飲み屋へ。
 そんなことはおかまいなしに昌三は皆の輪の中にすっかり溶け込んでしまって、メンバーとバチ(スティック)を叩いて歌う。で、引き揚げ兵のお客に怒鳴られる面々。血の気の多い健太郎が言い返し、ジョーさんは「ケンカでかたつけようじゃないか」と言い、すかさず「まぁまぁ」と割って入る大野。騒ぎに無関心の浅川と、ただオロオロしてる昌三(笑)。五人のカラーが良く出てる場面です。
 でも、結局「啼くな小鳩よ」を全員で大合唱して片がついてしまう。このへん憎いですよね。
 「歌や音楽は、たとえいさかってても誰の心も一つにまとめてしまう」
 
 飲み屋をでて、帰る所が無い昌三(素直に言えよ〜)は、ジョーさん家までくっついてきちゃう。へのごの行って帰らない昌三に、ジョーさんは「駅で寝ろ」というけども、「一緒に住んでた学友が女つくってしまって番地なしです」と言い出すので、流石のジョーさんも「上がれ」とほだされちゃう。いいひとですよ、ジョーさん。クールそうでも音楽や人情には厚いんだから。
 モットモ、私ならこんなカワイイ仔犬のような眸をした昌三に「帰る所がないんです」って言われたら、自分のフトンがなくなっても泊めてあげるぜよ!いや、自分が肉布団になってさしあげますっ!>落ち着けコラ(笑)
 上がりこんだ平山家は実はお兄さんが左翼の運動なんかやってるもんだから、そういう人が出入りしてるんでヤヴァイ雰囲気。「勝手に人を入れるな」という兄に対して、ジョーさんは昌三に「いつまでもいろ」と言うんです。この時、脳内でジョーさんと私が入れ替わりに……(笑)。
 ラッキーストライカーズは、EMのラッセル・リードさんにシロート呼ばわりされながら、徐々に結束を固めていき、ジャズメンとしても腕を磨いて行きます。ラッセルさんは、弟をレイテ戦役で亡くしてから日本人を憎み、また自分もそのジレンマに悩みつつ生きている男。彼も、テナーサックス奏者として一流の腕を持つからこそ、大金が目当てて実力がともなわないラッキーストライカーズに冷たい態度をとってましたが、次第にジャズにのめり込み、貪欲に進歩しようとする彼等五人に理解の心を示していくようになるのですが……。
 
 ある日、基地に向かうトラックの中でお金持ちのお嬢様歌手・依田涼子と外娼が口ゲンカをはじめてしまう。その様子を黙って見ていた五人ですが、昌三はたまらず「昨日は羽黒山勝ちましたかね?」としゃしゃりでてしまったのでした。
 一蹴されてオシマイ、な昌三ですが(笑)、この時の目付きはもう涼子に釘付けっすね。一目惚れ?というかモロにあんた気があるのバレバレやろ(笑)。というくらいおっきな目をきょろきょろさせてまたカワイイvv
 EMクラブでもずーーっと涼子のことばっか見てます。
 涼子の歌「センチメンタル・ジャーニー」が終わって「あんなケンカは東京じゃ当たり前なんだよ」と健太郎に言われる昌三。「でも東京も長崎もそんなの変わんないでしょ」という昌三?アレ?明るいキャラの昌三の表情に何か影が。
 というところへ涼子がやってきて「さっきは私を助けるつもりで相撲の話をしたんでしょ?でも、あんな人たち相手にする気がないから、と気丈に言ってのける。「時代は変わったのよ。いつまでも戦争を引き摺ってられない。戦争は終わったのよ」と言う涼子。
 昌三は、涼子の言葉に突然ブチ切れてしまいました。
「オレにとっちゃ戦争は終わってないんだよ!!」
 ブチ切れたまんま、EMクラブを出て行ってしまう昌三。オイオイ。
 ゲートを出る時に門兵にサインを求められるも「オレはジャズマンだ!」と叫んで出てっちゃう昌三。それまでののほほん天然キャラがうって変わって、怒りの表情になってまぁ。
 「あんた、アイツに何か言ったのか?アイツ滅多なことじゃ怒らないんだよ」と、涼子に言うジョーさん。
 まもなく演奏が始まってしまうのですが、今夜はジム軍曹の誕生パーティ。大事な日なのに昌三はブッチしてしまうし、もうヤケのヤンパチ?な状態で「ダニー・ボーイ」を演奏し始める健太郎たち。実は、この曲はEMクラブではタブーだったんですよね。ジムの死んだ息子がダニーという名前だったので。
 案の定、ジムは悲しい目をしてクラブを出て行き、それで他の兵士達もぞくぞくと去って行った。健太郎たちはEMクラブに立ち入り出来なくなってしまいました。
 くだんの昌三ですが、どこをほっつき歩いていたのか明け方にジョーさん家に戻ってきました。
 門の前にうずくまって待っている涼子を見つけると「何しにきたんだよ」。すっげえ不貞腐れ声(笑)。でも、カワイクなさぶってるところがカワイイんだよ。
 「あなたが怒った理由がわかった」と言う涼子。
 昌三は長崎の出身で、両親が被爆してたのです。それで、仕送りするためにウソをついてまでジャズバンドに入った。そのことで、実は人知れずジレンマ抱えてたんですよね。両親をそんな目にあわせたアメリカ兵の基地でドラム叩いて金を稼ぐなんて。
 が。謝ろうとする涼子に「お前、うっとうしいんだよ!」といって押し退けようとするのかと思いきや……ブチュvとドサクサにキスしてしまう昌三。
 アンタ、手ェ早過ぎやん(爆)!!
 てか、おもろ過ぎ。そのギャップはないだろ〜。私が涼子ならやっぱ即ホレるわ。
 (いや、既にトラックに乗り合わせた時点でホレてると思うが)
そのまま昌三は「ねむいっ!!」と怒鳴り散らして家に入ってしまいました。茫然と見送る涼子。
 いや、切なく可笑しいというオイシイ場面でした(笑)。こういうロマンスぽいのは今旬の俳優オダギリのオプションてことで。観てる女性ファンへのサービスだよね。ムフフン♪
 ジョーさんの枕元でスティックを折ろうと決心する昌三。起きてしまったジョーさんに「下りるなら折ってみろ」といわれ、ちょっとたじろぐ。
 「こいつでメシ食ってんだよ。こいつが転ばぬ先の杖になるんだよ」と、ジョーさんに言われる昌三。ここも泣かせるよね。
 結局、昌三は戻るんですが、なんかよーく考えたら、登場の時から池島昌三、ラッキーストライカーズを振り回しまくってるぞ(笑)!
 
 だがしかし。
 クラブで演奏してる時、ピアノの大野がマネージャーにソロスカウトされて引っこ抜かれたのをきっかけに五人はバラバラになってしまいます。大野は生き別れの種違いの弟を捜して、その為に金が必要だった。浅川はヒロポンにはまっていて抜け出せない。ジョーさんは、毎晩のように家に押しかける赤狩りやらの騒ぎの中で兄に反抗し必死に自分の音楽を求めていた、健太郎は他のジャズバンドで演奏しながら、ラッセルに近付きたいと模索し続け、ついにラッセルに認められるところまでこぎつけた気がした。変っていくメンバーたち。でも音楽への思いは変らない。
 やがてジョーさん家を出て、一人暮らしをはじめた昌三のもとへ、涼子が訪ねてきました。
 「一時間も歩いて疲れちゃった」という涼子は、昌三を見るなりすがり付いた。「ああ、私もすがりつきてえ〜〜」
 という心の声を押し殺しながら、いやこんなこと考えてる場面じゃねえ、と気を取り直しつつ。
 窓辺で「長崎エレジー」を歌いながら、
「お前も歌ば忘れられんと」

と涼子にいう昌三の最初で最後の長崎弁。

 ……うわ〜ん胸を打つセリフだがね( ̄^ ̄)
 池島昌三最高のセリフだ。
 
 1950年、朝鮮戦争勃発。米軍基地から次々に飛び立つアメリカ兵士達。彼等は、自分の死に番が来るのを恐れながら生きている。
 そんな時、浅川がヒロポン中毒で死んでしまう。バラバラだったラッキーストライカーズが皮肉な運命の巡り合せでまた集まって来たのですが。
 朝鮮戦争に発つ前に健太郎に新譜を渡して行ったラッセルも、死んだということをEMクラブのジムがメンバーに告げたのでした。楽屋で動揺する四人。
 でも、ジャズメンとしてラッセルが残して行った曲を力の限り演奏することこそ、死んでいった彼の本望だと覚った健太郎は、想いをこめて歌う。去って行ったラッセル、米軍兵、そして浅川の姿が四人の脳裏を駆け巡って、皆涙を溜めながら。
 その曲こそ「OUT OF THIS WORLD」―この世の外へ

 「未来に光が無くても 引き裂かれず
 私の心に あなたがいれば
 きっと歩いて行ける 夜の中へ
 恐れに立ち止まっても
 目を閉じると
 あなたの優しい声が聞こえて
 また歩いて行ける
 はるか この世の外へ」

 作詩は阪本監督。「この世」というのは「あの世」の対になる意味ではなくて、この今の世界、戦争が終わって新たな世界、という意味なんだそうです。確かに、そうなんだ。戦後の時代がどんなものか、私の世代は聞いたことでしか判らないけれども。現実に、今もすぐそこに戦場がある世の中だと思うと。
 さて。
 くだんのジャズ音楽に関してですが。もうスタンダードと呼ばれるものが全編に流れていて、それを実際に役者が演奏して、というものすごい本格派。プロに言わせるとどうなのかはわかりませんが。
 私もまがりなりにブラスバンドやってた時代があるので、楽器をいじったこともない人が一からマスターすることのたいへんさはよ〜くわかります。
 ともかくリード楽器ダメな私にとっては、萩原さんはすごく尊敬に値するし。あのマウスピースで音が出せるだけでも。プロのトランペッターであるMITCHさんのよどみない巧さはメロっとくるしねー。あの音は。いや、これでもペット歴は2年ほどあったんですけど(笑)。ケースからいきなしガバッと出してチューニングなしだあの流麗なメロディはフツー出ないよっ、と感動モノ。村上淳さんなんて、キャスティングが遅くなったためにイチバン大変だったそうですが、それでもピアノはすごい様になってたんで。松岡俊介さんのベースもしかり。ベースは弦楽器なのにリズム楽器なんで、一人の練習が最も難しいんですよ、ヴァイオリンとかと違って。オダギリは中高とドラムやってたそうですが、ロックだったんでジャズは一からってことで猛練習したんですって。知ってるのにスティックを「バチ」と呼び、握り方もわかんないような役をするのは却って大変かなぁ、とも思います。
 辛気臭いようですが、阪本監督が映画を撮るきっかけになったのが終戦記念日に行われていた「クラブ進駐軍」の演奏会に行ったのも。それがクレジットの横に流されてました。戦後、ジャズを謳歌した若者が現在も老境に入ってからもずっと楽しんでいられる。武器を楽器にもちかえろ、コレですよね。
 ホンマ、楽器を演奏しはじめると、どんなにケンカしててもくっそう、と思いながらも一つの音楽に向かって心が傾いていくもんで。ブラスの時もそうだった。どっちかというと、私は騒ぎに関わらない人間だったけど、ヒソカに腹立つ時とかも「音がささくれだってる」と思いながらだんだん打ち解けていくうちに音楽になったよなぁ、と思うものです。
 もともと割りとジャズ好きな私にとっては、音楽も楽しかったです。

 それにしても。
 全編通してオダギリ池島はよかった。他にはジョーさん兄弟のケンカを止めようとして、「ウッ」と飲み過ぎで気分悪くなって玄関前に吐いてしまう場面とか。
宣伝でよく出てたメンバーのケンカを止める場面で「オレたちラッキーでストライクでエンタツでアチャコなんだ!」ってブチ切れて、出て行ったあと「言い過ぎました」って戻ってくるところもカワイイ。
 ただのお調子モンぽいキャラかな?と思わせる最初に比べて、初めてのことに右往左往しながら友情に目覚めて、自分の中で葛藤して、恋をしてだんだんと成長していく昌三の姿はまさに日本の純朴な若者の象徴のような気がしないでもなかったです。最後のほうで、昌三のスティックを見詰める少年に「これで秋刀魚を引っ繰り返すんだぞ」というのも最初のシーンから昌三が成長した証になっててイイ。
 あと、カメオ出演の怪しげなエセ日系人役・哀川翔さんとのやりとりも面白かった♪大野明の弟・太郎もよかった。
 戦後という生々しい背景であるのに、スクリーンの中の町にはところどころ鮮やかな色彩と、賑やかで闊達な人々が溢れていて、苦しい事は多くても新たな世界を生きる人間の姿っていうのを考えましたね。

 
 
 


<終わり> 2004.2.8

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