●○●Two Face World●○●
-1-
「沢松、あなた今日限りで部活辞めなさい(真剣)」
「ほ〜、辞めてやろうじゃないっスか」
沢松はそう言いながら、報道部の部室の【いつもの席】に座る。
何をするでもなく、頬杖をついて 言った。
「じゃあ、もう買出し行かなくても良いんスよね?」
塁は、強気な笑顔で返す。
「ええ。行かなくて結構ですわ。紅茶も吉田のバニラも要りませんわ(否)」
「はいはいそーですか。行かなくていいんスね…」
沢松はポケットに手を入れ、財布があるかどうかを確かめ 面倒くさそうな顔をして立ち上がる。
そして部室から出て、廊下から扉を指差し 言った。
「鍵、閉めてていいっすか?」
塁は 時計をちらりと見て答えた。
「結構ですわよ(許)」
扉は閉まったが、鍵は開いたまま 沢松の声だけが部室に響いた。
「んじゃ、行きませんから」
部室には、黙々と作業をする報道部員達の ペンを走らせる
音と
塁の静かな笑い声だけが響いた。
廊下には、誰かが駆けて行く音が ドタドタと響いていた。
-2-
沢松は、学校から一番近い自動販売機で 紅茶と無糖コーヒーを購入し、
180M程先にある【Yoshida★ICE】と書かれた看板を目指した。
早歩きでアイス屋の自動ドアを潜り抜ける。
それと同時に聞こえた【いらっしゃいませ〜♪】というフレーズに、
沢松は些か懐かしささえ感じていた。
久しぶりに素直な日本語を耳にしたものだ…と思いながら、レジへと真っ直ぐに向かう。
「バニラとコーヒー味、1つずつ」
「畏まりました。630円になります」
受け皿に630円を出して、アイスが2つ入った小さな容器を店員から受け取る。
自動ドアが開くと、外の生暖かい空気にうんざりしながら
沢松は学校へと走り出した。
横断歩道で足止めを喰らい、その場駆け足で信号待ち。
幾ら待っても信号が変わらないので、仕方なく渡った。
クラクションの音をバックに、沢松は走り続けた。
「アイス…溶かしでもしたら 梅さんに殺されちまう…!
―――ってか、あの写真バラまかれちまう!!」
沢松は、ドライアイスの存在をすっかり忘れて走り続けた。
そして。
最後の曲がり角を曲がると、そこには
腕を組んだ塁が 校門に軽く凭れて立っていた。
この暑い中汗もかかず 優雅に日傘を差して、立っていた。
-3-
「行ってらっしゃい、沢松(笑)」
「行ってきます」
「早かったですわね(睨)」
「え゛?!歩いてきたから遅かったっしょ?」
そして沢松は、ゴソゴソと紅茶とバニラアイスを取り出し 塁に渡しながら言った。
「買ってきませんでした」
「ええ、良い迷惑ですわ(怒)お金なんて返しませんことよ」
塁は沢松に小銭を渡し、校舎に向かって歩き出した。
沢松は、後を追う。
「バカ松、」
2歩 前を歩いていた塁が くるりと振り返る。
ふわっとした金髪とスカートが ひらりと宙を舞った。
「野球部の練習が始まりませんわよ!スッパ抜きたくありませんの」
「どうせまた牛尾さんを ちょっとだけ撮らないんでしょ」
「そんな事…ありませんわよ!(怒)さっ!行きませんわよ!!」
そう言って、バシッと沢松の肩を叩き 塁は走り出した。
沢松も焦って走り出す。
そして、塁の横に並ぶ。
「俺を置いて行って下さいっスよ」
「そんな事…しませんわよっ…あ!!;(汗)」
塁は手を口に当て、苦笑いを浮かべた。
沢松は、勝ち誇った顔をして 塁を見た。
-4-
「はーい!!梅さんの負けっスよ!!っつー訳で、あの写真は消去して下さいねー☆…約束っしょ?」
「〜〜〜〜〜〜!!!(悔)」
塁は、悔しそうな顔をして立ち止まった。
それから 溜息をつく。
「…絶対に勝てる自信…ありましたのに(憎)」
「負けは負け♪素直に認めないと!ねぇCAP?」
「来年は負けませんわよ!!!(宣言)」
「えぇっ!?来年もやるんスかぁ?!」
コーヒーアイスを食べながら、沢松は【もう勘弁】という顔をする。
今も尚 悔しそうに唇を噛んでいる塁は、日傘を閉じた。
【思っている事と真逆の事しか言ってはならない】という2人の中だけ、
1日限りの嘘吐きゲーム。
4月1日の今日しか出来ない、エイプリルフール専用ゲーム。
沢松は 溜息をついてから言った。
「俺だって…来年も負けないっスから」
「アラ、意外にノリ気じゃないの(驚)」
野球部が練習を始める前の、静まり返ったグラウンド前。
無言で紅茶をこくこくと飲む塁を見て、沢松は ある賭けに出た。
嘘吐きゲームの第2ステージの開始。
「…梅さん、俺……梅さんの事、嫌いっすよ」
全てを知っているような 余裕の笑顔で
塁は沢松を見上げた。
「―――――」
返ってきたのは 嘘が下手な塁の、心地のいい嘘だった。
―END―
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―――はい。もう…逃げていいですか(えっ)
沢梅ですよ。健吾v塁ですよ。
訳わかんないのは いつもの事なので…誤りきれません(死)
実は【エイプリルフール】ネタは使いたくて仕方なかったのですが…。1つ難点が。
…4月って…。沢松…部活入ってないんスよね(考えるな犬丸!)
で、沢松が2年・梅さんが3年設定の話にしても良かったのですが、
そうすると【来年は負けませんわよ】が使えなくなるので。
ミスフルはギャグなんで、時代のズレには突っ込まないでやって下さいませ(汗)
―――ある意味パラレル…という事で。
(そういう事にしておきます!すみません!落ちます)
+2003*07*03 扇犬丸。+