「イツキ、灰皿貸して」
「ごめん…封印したんだ」
「は?何でよ」
イツキは 苦笑しながら言った
「やめたんだよ…煙草」
●酔生メランコリィ●
「あっそ。…でも、あたしは遠慮なく吸うわよ」
そう言って カリンは仕方なしにポケットから携帯灰皿を取り出す。
「何だ、灰皿持ってるなら最初からそれ使えばいいのに」
「滅多に使わないのよ」
「で、僕のを使う気満々だったと。」
「ふふ、その通り」
微笑を浮かべて カリンは本当に遠慮なく白煙を吐息に混ぜる。
イツキは軽く窓を開けて、ベッドに座る。
幸せそうに煙草を吸うカリンを睨んで、イツキは言った。
「禁煙中の人間の部屋に居着くってどうなの?」
意地悪そうに笑うカリンは、ベッドに近付いて 煙草をイツキの顔に近づけて返す。
「何?吸いたくなった?…ふん、何処まで耐えられるかしら」
イツキは ドサッと横に倒れこんで、
枕に顔をうずめて うつ伏せに寝転んだ。そして言う。
「〜だぁ――――っっ!!!もう!!! そうやってカリンはいつもいつも僕を誘惑して…
弄んで…!!色んな意味でっ!!」
「何よー、そんな事言ったって あたしは出て行かないからね」
カリンは、枕に顔をうずめたままのイツキの耳元で囁いた。
イツキは 微かに香る煙草の香りを振り払うかのように 首をぶんぶんと振った。
「カリンは僕をどうする気?」
「決まってるじゃない。いじめ抜いてやりたいのよ。どうせあんたに禁煙なんてできないんだから」
枕のせいで、篭もった声しか出ない。
「…どうせ僕は意志が弱いですよ…」
「はいはい。スネるんじゃないの」
頬をつねられる。
「いてててて…!!!スネてなんか…っ!」
イツキが顔を上げると、カリンは笑うのをやめ 無表情になった。
そのまま 寝転ぶイツキの横に音も無く座って。
イツキを見下ろして言った。
「――何で イキナリ禁煙なんて始めたのよ?
付き合い長いんだし、あんたの意志の弱さもヘタレさも知ってる。理由ぐらい教えなさいよ」
カリンはシーツに灰を落とさないように、灰皿を手に載せている。
イツキは少し躊躇ってから ぽそりと答えた。
「…寿命を縮めるのはやめたんだ」
「ふーん」
「な、何その反応」
「別に。今までガンガンに吸ってた癖に…と思っただけよ」
「しかも、【超】が付く程のヘビースモーカーガールと毎日一緒にいるもんなぁ」
「はいはい。そりゃー悪かったわね」
そう言った後も イツキの部屋には白煙が舞う。
少しの沈黙の後、カリンが尋ねる。
「…死期が早まるのが 恐くなったってワケ?」
イツキはガバッと起き上がり 力一杯否定する。
「違っ……!!死ぬのは必然的な事だろ?!
だから…だから、何か馬鹿馬鹿しく思えてきただけだよ…!ほんとは――――…!」
下を向いて 珍しく大声を上げるイツキを眺めるカリンは、無表情のまま。
「【ほんとは】、何よ?」
胸が張り裂けたような顔をして、イツキは顔を上げる。
「…カリンにも、やめて欲しいと思っ…!」
イツキが目を見開いたその時にはもう既に カリンの唇が 自分の唇に重なっていて。
目をつぶったカリンの顔が目の前にあった。
言いたい事は まだ全部言えていないのに
まだ全部 伝えられていないのに
唇が重なっているから【お願いだから 最後まで言わせてくれ。邪魔をしないでくれ】なんて
そんな事言えるはずもなく イツキは硬直してしまった。
苦い 煙草の味がする。
そのうち 舌同士が絡み合って、完全にイツキの口内には煙草の苦味が広がった。
唇を離し、カリンは微笑を浮かべて 短くなった煙草をもみ消した。
「なっ…何するのさ…」
口の中の苦味と、肌に残ったカリンの香水の香りを感じながら、
イツキは どうしようもない脱力感を覚えた。
「あんたが煙草やめるってんなら、あたしが毎日ここで 苦いキスをあげる」
「何のつもりだよ…カリン」
カリンは 微笑を浮かべたまま返す。
「あたしの寿命だけ縮まるのって悔しいじゃない」
と 当然のように言って、イツキのベッドにごろりと倒れこむ。
イツキは、脱力したまま 再びベッドに沈み込んだ。
「持ってるポケモンが悪タイプ+ゴーストなだけあって、ほんとに【道連れ】だな…」
同じ天井を眺めながらの会話。
「まあ…あたしの好きな技だしねー」
「もう…煙草やめても全然意味無いじゃん僕!」
イツキがそう言うと カリンはくるりとイツキに背を向ける。
「カリン…?どうしたのさ?」
それに気付いたイツキが声をかけても カリンはこちらを向かない。
すると
「――あたしより長生きしたら許さないんだから…」
ぽつりと 不器用にカリンがそう言ったから
「ほら そうやってカリンはいつも僕を―――」
イツキは シーツの海の上で、さっきと同じ台詞を吐いて
禁煙していた愛煙家が とうとう諦めて煙草をむさぼるかのように
強く 強くカリンを抱きしめて
声が枯れるまで 名を呼び続け
煙草の苦味が感じられなくなるまで 何度も何度もキスをした。
end*
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●あとがき●
裏で交換日記を一緒にやってる、星螺ゆめ姉様との合作ですvvv
何か…表なのに無駄にえろっぽくなってしまいましたねー…
多分、この後裏的展開になったんじゃないかと。
えっと、メールで合作したものなので、
イキナリ話が飛んでたりもしますが お許しください〜!!