「バカ松、こないだの写真 小分けしておいて頂戴(頼)」
慌ただしく部室を梅さんが出て行ってしまってから、 ぽつりと残された俺は
多すぎる写真に 溜息をついた。
●ピンボケ●
「これ絶対【全国パシリランキング】とかあったら俺優勝だな…」
ひとりごと。
とにかく 始めなきゃ終わんないから
俺は大量の写真に目を落とした。
…キャプテンばっかり。
お、天国じゃん…って、明美バージョンまである…!?
1枚の小さな紙の中に こないだの試合が 細切れに詰まってる
野球部員ばっか 詰まってる
―――って、当たり前だっての!!
俺は 気を取り直して、写真整理を続けた。
「…ん?」
途中から 続々と現れ始めたピンボケ写真たち。
ボケて 何を撮ろうとしたのかサッパリわからん。
「へー…珍しい事もあるもんだな」
あの梅さんが失敗こくなんて。
まぁそりゃ、あの人だって サイボーグじゃないんだもんな。
猿も木から…いやいや、プロだって失敗ぐらいするよなー。
当然。
そこで 俺は辺りを見回して
こっそりと ピンボケ写真を何枚かゴミ箱に沈めた。
だってこんなにいい写真撮る人なんだからよ。
机の上には、ピントのきっちり合った 動きのある写真が並ぶ。
俺は自分のイイヤツさに酔いながら、鼻唄を歌って写真整理を続けた。
数分後。
「バカ松!!!悪いけど…さっきの写真の内、1枚だけ至急渡して下さいませんこと?!(汗)」
息を切らして 梅さんが走ってきた。
何かめちゃめちゃ急いでるっぽかったから 何故か俺まで焦ってしまった。
「え、【さっきの1枚】?…どれっスか?;」
折角整理したばかりの写真を ぐちゃぐちゃにしながら俺は言う。
荒い息のままの梅さんが 俺の横に来て
自分で頼んだ癖に、俺と同じぐらいに写真を荒らしながら 1枚の写真を探す。
「猿野君が、スクラッチに見せかけてホームランを叩き出したすぐ後の写真があったでしょう?
……アレが今欲しいんですの(急)!」
俺は 床にバサバサと落ちた写真を拾いながら、
頭上にクエスチョンマークを大量に浮かべていた。
…んな写真あったか?
束ねた写真を机に置き直して、尋ねる。
「どんな構図っすか?天国の写真はあったけど…
ホームラン打った瞬間の写真しか無かったっぽいんスけど???」
早口で 梅さんは答えた。
「猿野君の腕とバットと、小さなボールと空しか写ってない、
焦点のズレた写真を撮ったはずなんですのよ…(困)!」
――――え゛。
俺は一瞬固まってしまった。
…ピンボケ写真っつったら…。
「そ、それって…」
「え?!心当たりありますの?」
苦笑いのまま 俺はさかさかと後ろ向きに小走りする。
「確かこの辺に〜〜〜〜〜〜〜…;」
ゴソゴソとゴミ箱の奥底をまさぐる。
それを見た梅さんは、息を深く吸い込んで。
「…バカ松っ!!!!(怒)」
「うわぁぁあぁはいぃ!!?;」
ほら来た。
つかつかと歩いてきた梅さんは、溜息をついて しゃがんだ。
アームカバーをぐいっと上げて、ゴミ箱に手を入れる。
冷や汗をだらだらと流す俺に、怒ってるような 呆れてるような口調で梅さんは言った。
「まったく…報道部に入ったのなら、撮影技法の1つや2つくらい覚えて頂きたいですわ…(呆)」
「えっ?」
な、何言われてんだ?!俺…。撮影技法なんて知らねーよ…!
「バカ松には ただのピンボケ写真に見えたのでしょう?(尋)
知らないでやった事なら仕方ありませんわね…」
「す、すんません…;;;」
ヘコヘコ謝る俺に、ゴミ箱の中の写真を ポイポイ発掘していく梅さんは教えてくれた。
「わざと焦点をズラして撮る、【アウトフォーカス】という方法があるんですのよ!(教)」
「そうだったんすか…すんません、俺…」
言いかけて 俺はゴミ箱をひっくり返した。
バサバサと落ちるゴミと写真の中から、必死で天国の写真を探した。
天国の腕と、バットと…
小さなボールと空しか写ってない ピンボケ…じゃなかった、
アウトフォーカスの写真――――
『あ―――っ!!!』
俺と梅さんは、同時に叫んで その写真を発掘した。
二人とも床にべったりと座り込んで、ほっと胸を撫で下ろした。
「良かったですわ…(助)」
「そっすね…」
俺は 改めてその写真を眺めた。
…確かに 俺から見りゃー、【ただのピンボケ写真】。
でも…そういう技なんだって聞いてから見たら、
なんか段々【アウトフォーカスの写真】って思えてきた。
まぁ ぶっちゃけ。おNEWなカメラ小僧用語を覚えたから 言ってみたかっただけだったりする。
ボヤけた天国の腕とバット
遥か上空に 点のように写った白球
うん。
いい写真だよな。
「梅さん…ほんとスンマセン!はい、コレ」
俺が写真を手渡すと、梅さんはくすっと笑って。
「もう、よろしいですわよ(笑) さっきも言ったでしょう?
知らずにやった事なんですから…許してあげますわよ、特別に(許)」
それを聞いたら ホントは黙っておく気だった事が ぽろりと口から滑り落ちてしまった。
「あの…俺、失敗作かと思って…。それを梅さんに見せたくなくて、つい…」
「――プッ;(爆)」
梅さんは 大真面目な俺を見て笑う。 肩を震わせて、顔を真っ赤にして。
「なっ、何で笑うんスか?!」
「いやね、バカ松は本当にバカですわね…それが可笑しくて(笑)」
「む……;」
梅さんは まだクスクスと笑っている。
それから立ち上がって、俺の頭に手を置いて 俺を見下ろして言った。
「誰にだって失敗くらいありますわよ。でも…私の助手なら、
失敗か意図的なものかの区別くらい、しっかりつけて頂きたいものですわ(苦笑)」
頭に手を置かれたまま 俺は返す。
「俺が悪うござんした…」
そんな俺の顔を見て
「まぁ、そんなおバカな所と 変に気を遣う所がバカ松の良い所なんでしょうけどね(呆)」
と言ったその顔が まぶしくて
綺麗で
綺麗で
俺は言葉が出なかった。
のぼせたような俺の 頭から手を離すと、梅さんは廊下へ向かった。
「この写真、明日の朝 十二支スポーツの号外として配られることになりましたのよ!(嬉)」
と 誇らしげに言って、振り返る。
どもりながら、俺はモゴモゴと言った。
「へ、へぇ…すすすす凄いっスね★さっすが梅さん!」
そしたら 鼻で笑われた。
「あら…随分とお世辞が上手くなりましたわねぇ(笑)」
「はっ!!?違っ…!」
トン・と廊下に飛び出して 手をひらひらと振って。
「写真、ちゃんと整理し直しておいて下さいな(頼)あと部室の掃除も頼みますわよ!」
「へーい」
走り出すと同時に、こっちを見ずに
「感謝しますわ」
そう言い残して 梅さんは行ってしまった。
――再び、部室にぽつりと残される俺。
ただただ 呆然として。
ゴミ箱の中身もバラ巻いたまま 俺は椅子に腰掛けた。
「…やっぱ、あの人には勝てないよなー…」
また独り言を呟いた。
上を向いて、右手の甲で 両目を覆い隠してみた。
なんか…俺、たまに梅さんのことが ぼんやり見えることがあるんスよ
「やべ―――…俺の目までアウトフォーカスかよ!!?」
あの人のこと ちゃんと見られなくなってる
――って、俺が悪いんじゃねぇよ!!!!
…梅さんが キレイすぎるから。
俺の目が 俺を壊さないように勝手にピントずらしてんのかもな。
サンキュー眼球!…世話になります。
そう思うと、自然と口元がゆるんできた。
:end:
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●あとがき●
ずーっっっと前に書いたものを発見してupしました。
ヘタレ沢松万歳!美人梅さん万歳!とか思いながら打ってました。
うーん。
沢梅…やっぱごっつ好きです。
なんか運命のカプに出会っちゃった気がします。運命★
アウトフォーカスは、いつか使おうと思っていたのですが、
昔既に使っていたとは意外でした。忘れっぽいんですね(笑)