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++君を照らす太陽に++












「離して下さいませんこと!!?」


ツツジの細くて白い手が、ぱしっとトウキの手をはたいた。


「何だよー? そんなに拒絶しなくていいじゃん」
「私…、しつこい方は嫌いですの」


そう言い放ち、踵を返すツツジの前に回り、トウキは再びツツジの手を掴んだ。


「一人じゃ危ないっスよ? お嬢様」


意地悪そうな笑みを浮かべ、トウキは顔をツツジの耳元に近づけた。
ツツジは、必死で抵抗する。


「ごっ…ご心配無く!」


ツツジはトウキの顔をぐいっと押し離す。
トウキは額を押さえながら、言う。


「攫って行かれても知らねーよ?俺が家まで送って…」

言い終わる前に、ツツジがぴしゃりと言った。

「家には帰りたくありませんの。 もう私について来ないで下さいまし!」
「あーあ…連れねぇなぁ…;って、【家に帰りたくない】??」

「私はこのままトレーナーズスクールに行ってから ジムに戻るんです。
 何かあったらポケモンと共に立ち向かいますから、どうぞご心配無く」



当然の如く そう言ってのけたツツジの顔は 何処か凍っているようだった。
コツコツと 黒い革靴のピンヒールを鳴らしながら歩き出した。



沈みかけの夕日が 彼女の身体の右半分を照らす。
頬に落ちた その細やかな影は、彼女の睫毛の長さを照明していた。



気が付けばトウキは

またツツジの手を掴んでいた。



先程とは違い、【手のひら】ではなく 自分の手で軽く握れてしまうくらい細い【手首】を掴んでいた。

――咄嗟の行動だった。



後ろから手首を掴まれたツツジは 驚いて振り返る。
今までの表情とは全く違う、真剣な顔でトウキが自分を見ていた。

――そして、口を開いた。



「なぁ…ツツジさんよぉ、…あんたが今 一番やりたい事って何なんだ?―――教えてくれよ」


ツツジは 一瞬目を見開いたが、軽く眼を閉じてしまった。
トウキは、一歩踏み出して ツツジの真横まで来た。




「…判りません…」




返ってきたのは、先程とは大違いの 消え入りそうな声。
下を向くツツジに、トウキは更に訊ねる。


「言っちゃ悪いけど、今のあんたは切羽詰まってる感じがしてならねぇ。
 …ホントにこんなびっちりスケジュールの毎日に満足してんのか?」

「…貴方もジムリーダーなのでしょう?…然程変わらない筈ですわ」

「あぁ、俺ってば田舎もんだからさ…その…;
 大自然の中で遊んでたらいつのまにか修行になってたりするからさ。
 挑戦者が来ない時はずっと海でサーフィンしてるし。…ポケモンと。」


オレンジ色の空を見上げて、本当に充実した毎日を送っていそうな表情を見せたトウキを、
ツツジは黙って見ていた。


「ジムリーダーとして俺は、ホントに怠けてるみたいにしか見えねーと思う。
 …けどさぁ、俺から見たらあんたは 本当にやりたい事をやる時間が少なそうでさ…」


「…それは…」
「ん?」
「………」
「あ、別に無理に言えって言ってる訳じゃないけど」


「…仕方の無い事ですのよ」


そう言った顔が 何処か寂しそうで。


「…【仕方の無い事】?」
「…そうですわ。判ったらもう…何も訊かないで下さらない?…あと…」
「? …何スか」


「いつまで手を掴んでらっしゃるの?」


ツツジに真顔でそう言われ、トウキはハッとした。
先程咄嗟に掴んでしまったままでいた。

まるで体温の無いような そんな細くて白い、ツツジの左手。


「あー、ごめんごめん…つい;;」


そう言って、ぱっと離した。
すると、ツツジは時計をチラリと見てから モンスターボールを取り出した。


「すみません…私、そろそろ行きますわ。遅刻してしまいます」


ボールの中からはフーディンが出てきて、ツツジをひょいと担いだ。
ツツジはトウキの顔を見て ぽそりと言った。


「……貴方のような 自由な生き方が…羨ましいですわ」


トウキはその小さな声を聞いて、何か言おうとして口を開き、
手を咄嗟に伸ばしたが そこにはもう彼女もフーディンも居なかった。

――多分、トレーナーズスクールに【テレポート】したのだろう。


「…ツツジ…」


伸ばした手は 力無く宙を舞い、そのままポケットへ流れて行った。
ポケットの中のモンスターボールに手が触れる。

そのままトウキは、モンスターボールからマクノシタを出して 一緒に歩き始めた。





空はもう 薄い紫色に変わっていた。





「…【自分が今一番やりたい事が判らない優等生】、かぁ…」

独り言の様にそう言ってから、マクノシタの頭に手をのせて

「【可哀相だ】としか言い様が無いよな……なぁ相棒?」


その言葉を 理解しているのかしていないのか、マクノシタはこくこくと頷いた。
トウキは、そのまましゃがんでマクノシタの頭を撫でてから 額をこつりと合わせて言った。


「さっすが俺の相棒!!やっぱそう思うよな?!」


そして 子供の様に笑った。
元から笑っている様な顔をしたマクノシタも無邪気に笑った。


「俺さぁ、何とかしてあの箱入り御嬢様に 【今一番やりたい事】を見つけさせてやりたいんだ」



そう言って トウキは立ち上がる。
立ち上がった【相棒】の姿を マクノシタはポカンと見上げる。



握り拳を作って 今度は段々紺色に変わり始めた空に手を伸ばした。

――空に向かって 右ストレートをするかの様に。



「優等生優等生言われて疲れてるなら、俺が幾らでも愚痴聞いてやろうと思ってるし
 ジムリーダー同士…仲良くやりたいと思うんだよ」


伸ばした手を眺めたままトウキがそう言うと、マクノシタも空に向かって 握り拳を伸ばした。
お互い顔を見合わせて にかっと笑った。


「俺みたいな格闘バカはさ…相手にしてもらえねぇかもだけど」

そう言って 手を下ろす。

「あの箱入り御嬢をあのままにしておきたくねーし」

マクノシタも手を下ろす。




「それに…俺は【優等生だから】とか…特別扱いなんてしない」




下ろした手を、腰に当ててトウキは言った。










空はとうとう、紺色に変わった。

三日月が眼に留まる。











「トレーナーズスクールからも、この三日月が見えてたらいいよな。 …なぁ?」


トウキが月を見ながら言うと、マクノシタも1回だけ頷いた。

1回だけだったが、深く頷いた。









to be continued......

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++後書++

どうも!真夜中でGW真っ最中でテンション狂いまくりの犬丸デェース!!
…な、何と…初めてのトウツツですよ!しかも続き物。

まだ二人が出会って間もない頃…という設定です。
犬丸的には大ヒットなトウツツ。
世間ではまだあまり見ないトウツツ…(泣き/2003+05+04現在)
負けないさ!!!!うん!!!

お嬢様と格闘マニア大PUSH!

次で完結です。…多分v(笑顔/秒殺っ★)



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