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□■ミルクの雲■□








「おーいッッ!!ひのきちーッ!」



私を呼ぶ声に、周りを行き交う人々が思わず振り返る。
手をぶんぶん振り回して、私の名前(しかも変な呼び方で)を、恥ずかしいくらい大きな声で呼ぶ。
私は、赤面しながら下を向いて、てとてとと走って その人の元へ行く。


「…あんまり大きな声で…私の名前…呼ばないで欲しい…かも」
息を切らしながら私が言えば、
「じゃないと会えないだろッ?」
等と 貴方は笑って言う。



付き合い始めて、まだそんなに経っていないから

私はまだ この人の奇行に着いて行けない事が多い。



人ごみは嫌い。…気分が悪くなるから。
待ち合わせの時は、どれだけ早く来ても なかなか二人が巡り会えないから。

―――でも、会ってからは平気。

私の倍以上の大きなごつごつした手が、私の手をきゅっと掴んでくれているから、
はぐれる心配が無いから。


私が人ごみを嫌うという事を知った貴方は、静かな喫茶店に連れて行ってくれたりした。

お店の人が来て、
「ご注文はお決まりですか?」
と言えば 

私はまだ何も頼んでいないのに、
「こいつと同じヤツなッ★」
とか言ったりする。

私がホット珈琲を頼むと、やっぱり同じモノを頼んだ。
いつも、自分で決める気が無いみたい。


そして、珈琲が2杯と、ミルク1瓶と角砂糖の瓶が運ばれてきて。
私がカチャカチャとスプーンで珈琲を混ぜていると、
目の前で、また貴方は奇行に走る。

珈琲が零れるくらいガチャガチャとスプーンで掻き混ぜて、
スプーンを抜いても珈琲が渦を巻いて回って波立っているところに、
ミルクを真上からつつーっと垂らす。

そして、赤面しながらキョロキョロする私の肩をとんとん叩いて、

「見ろよッッ!ひのきち!綺麗だろッ?!」
等と言いながら、
黒い珈琲の表面で、細い渦を巻きながら中心へと向かって行くミルクを指差したりする。


私は、呆れながらも その白い渦巻の動きに釘付けになる。


やがて、ミルクが中心まで辿り着き、全体へとミルクが広がっていって。
黒い珈琲は濃いベージュになるのだった。


そこまで見届けると、貴方はゴクゴクと珈琲を飲む。
これを私に見せる為だけに、ガチャガチャと珈琲を混ぜた貴方は、
静かな喫茶店でもお構いなしに、周りから見れば下らない話を散りばめる。


私は確かに恥ずかしい。
…けど…


貴方が私の前で気を遣わないでいてくれるのが嬉しかったりする。


周りから見れば、変な組み合わせの二人だって
周りから見れば、とんでもなく下らない話も
周りから見れば、ただのミルクと珈琲であっても


恥ずかしくても、楽しそうな貴方を見ていると、
【まぁ良いか】と思ってしまう自分がいて。








外に出て、野球部の人達に偶然会ってしまう事もあって。


私達が付き合っている事を知っている人と知らない人、どちらもいて。
知らない人に会う時は、妙にどぎまぎしてしまう。

別に隠す気は無いのだけれど…。

牛尾キャプテンにばったりと駅前で会った時は、
向こうから話し掛けられて、ちょっとドキッとした。
…その時 牛尾キャプテンは私達の事を全く知らなかったから。

けれど

別れ際にこう言った。

「何か君たちって、ぴったりな二人だね」


そこで貴方は、
「だろ―――ッ?!」
なんて笑って言ったりして。

私も、つられて笑ってしまった。











帰る時間がやって来て




オレンジ色から紫色に変わり行くグラデーションがかった空には、
白い雲が、空と同じ色の影と一緒に浮かんでいた。


電車に乗って帰る私の為に、貴方は駅前まで来てくれる。
家までは流石に遠いので、送って貰った事は無い。



空をふと見上げると、
昔読んだ本に載っていた詩を ぼんやりと思い出して

横で【綺麗だな〜ッ】なんて言って笑っている貴方の顔を見て。
その詩の事を言ってみたりする。



「…空を掻き混ぜるほど 高く 高く…手を振ると、また すぐに会えるんだって……書いてあったかも…」



すると 貴方は、【へぇー…】と 何かを考えている様な顔をして。


「おしッ!」
と一言。


駅から、電車があともう少しで到着するという放送が音楽と共に流れると。








周りの人が見るのも気にしないで

貴方は

思いっきり

思いっきり

手を振る。




夕焼けのせいで、貴方の顔は逆光によって見えない。

でも、笑っているのはわかった。   何となく。



「じゃあなッ!!気をつけて帰れよッッ!!ひのきち!」



「ありがとう…かも…文ちゃん先輩」



そして、笑顔を交わして 私は駅へ、ホームへ。







ホームに立つと、すぐに電車が来て。

足を踏み入れたとき ふと思ったりした。




貴方は、また…私の為だけに

【空】という珈琲に浮かんだ、【雲】というミルクを掻き混ぜたのかなぁ、なんて。

貴方といると、そんな 周りにしてみれば【馬鹿じゃない?】という事でも、
普通に考えてしまう。



貴方とのこれからの生活を
私は大切にしたいなんて、ぼんやりと電車に乗りながら考えていた。






□■END■□



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◆◇感想◇◆


うわぁー…(死)そう来たかぁ…(お前や)
何とコレ…!!!獅子v猫だったりするんですよ!!!わー。
自分でもびっくり。

しーかーしー…ハマってんじゃん自分!
ちょ、ちょっと獅子猫楽しいんじゃないですか?!うわー。

てか、文ちゃん好きだー。檜ちゃん好きだー。
犬丸は、好きなキャラ同士がくっつかないとヤなんで。
 とか みか とか  とかには渡せませんよ檜嬢はー!!!
(ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい×∞)

と、とにかく…他のサイトではこのカプ見た事ありません。(2003/2月現在)
結構自分ではこの二人PUSHなんですが、どうなんでしょうね;;

あ、ちなみに檜ちゃんの言ってる詩は、
はたちよしこさんの詩【手を振る】の事です。
「昔…」と言ってますが、実はこれ最近できた詩だそうです。
つか、犬丸…この方の詩はコレしか知りません(ぎゃ)


back  to  the  future!(爆)